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○土曜日曜の窓口開庁           群馬県太田市

1.これまでの経緯

 ○現市長が就任した平成7年度、窓口業務の1時間延長を実施。
  太田市は富士重工の町。クルマの会社にはたくさんの中小企業があり、労
  働者は休暇をとって市役所に来なければならない。この点を改善すること
  が必須との考えから。
 ○平成10年度 市内のショッピングセンター内に役所のサービスセンター
  を開設。店に合わせた営業時間。これにより、本庁舎の窓口延長は廃止。
 ○平成13年度 全庁の毎週水曜日2時間延長を試行、翌年度から1局10
  課にしぼって本実施。
 ○平成14年度 市長からの指示で「土日開庁」検討を始める。
 ○平成15年度 土日開庁を本実施。
 
2.土曜日曜開庁の概要

 @開庁している部課
  外国人相談、市政情報コーナー、市民税課、資産税課、納税課、市民課、
  介護サービス課、保険年金課、住宅課、こども課、水道局(1局10課)
  場所は本庁舎1、2階と水道局。住宅課のみ、上位階にあるので、土日は
  1階に下りてきて開庁。
  外国人相談は、太田市に日系ブラジル人が7000人など、ニーズが多い
  ことから。ごみの出し方、医者のかかり方、税のしくみ、保険のことなど
  の問い合わせに応じる。ポルトガル語通訳を設ける。
  詳しい業務内容は太田市ホームページを参照。
  水道事業は民間委託としている。開庁に伴い、管理部局のみ職員がいるこ
  とになる。
 A労働組合の反対
  猛反対がきた。組合チラシには幹部職員の実名「名指し」まで書かれた。
  しかし市長の決めゼリフ「土日開庁は町で働く人たち、つまり労働組合の
  人たちの同志のためなのだ」
 B開庁の職員配置
  各課職員がローテーションで土日勤務を担当、2名の正規職員、2名の臨
  時職員体制。
  正職員は休日勤務扱いとはしない。このため超過勤務手当ての支出はない。
  正職員はその代休として、月曜または金曜日に休暇を割り振る。このこと
  で3連休がとれる。
  臨時職員も地方公務員法上の遵守義務があるので、あらかじめ必要な研修
  を行う。
  土日に職員が当る回数は、月当たり1回〜2回弱。
  税関係3課については、本来なら納税課だけでよいのだが、問い合わせな
  どがあれば、資産税、市民税も必要。3課一体の考え方をしている。
  保険年金課については、年金、医療、国保それぞれ専門化しているので、
  各2名の6名体制。
  学校指導課も含めようと3、4月に限り試行したが、転入出手続きは相手
  先の市役所も開いてないと仕事にならないので、廃止した。
  幹部職員の着任については、部長12、副部長20、計32名が総括責任
  者としてローテーションで着任(毎回1人)。年に3回くらい当る。今年度
  からはこれに加えて部参事(課長級)も含める。そうすると年に2回の着
  任となる。
  統括責任者は、市役所玄関の総合窓口に座る。またフロアマネージャーの
  役割もする。このことで、「部長席から見えないものも見えてくる」
  人事異動で、窓口課に行くと土日出勤があるのでいやがる職員もいる。し
  かし仕事だから、原則希望は認めない。
 
 Cランニングコスト(年)
   人件費    3000万円    嘱託賃金15人分
   水道光熱費   750万円
   委託料     100万円    NPO
   合計    約5000万円

 D利用実績
   平成15年度実績 100日開庁、
   1日当り平均来庁者数        287人
   1日当り収納金額    1,647,130円
   ※庁舎敷地で11月にフェスティバルが行われる。これにより、「ついで
    に寄っていこう」と、来庁する市民もおり、11月は増えている。
   ※日曜日よりも土曜日の方が利用者が多い。このことから介護サービス
    課では職員を土曜日2名日曜日1名とした。

3.感想

 太田市を訪問して、この土日開庁の件に限らず、さまざまに啓発と刺激を受けました。このことについては、別に稿を設けたいと思います。
 まずはやはり、市長の強いトップダウンの力。これなくしては、この制度の発足はあり得ませんでした。ここに毎年使われる5000万円という経費が安いと見るか高いと見るか、それは市民が判断するところです。しかし労使の熱心な討議の賜物でしょう、職員の納得のもとで、正規職員には超過勤務手当てゼロというスタンスを保持しながら、見事に業務を成り立たせています。土日に市役所で仕事をする職員の意識が、おそらく「市民のために働いている」という前向きなものになっているのではないでしょうか。そうした経費にのぼらないメリットがあり、そのことが知らず知らずに、平常業務への姿勢にいい影響を与えているのではないかと想像します。
 今回の太田市訪問の直前、奇しくもある市民の方から、休日も市役所を開けてほしいという要望を受けました。「今度、それを勉強しに行ってきます」と答えました。まことにいい返事ができたのではないかと思っています。こうした市民の要望は少なくないはずで、あとはコストと効果の検討あるのみ。何より、冒頭のとおり、トップが強い決意を持たなければなりません。なるべく早い機会に、そしてタイミングを計って、市政に問いかけたいと思います。
 1日当りの来訪者数、そしてそれ以上に、収納税額を見て驚きました。コストの5000万円という額は、おそらく開庁する部局が同じ程度なら、丸亀市が実施しても同じくらいの額となると思われます。しかしメリットのほうは、人口規模に左右されるのであり、16年3月現在の太田市の人口15万2千人に対して、この来庁者、収納額ですから、単純に比較しても、丸亀市で実施すればそれぞれ半分強という数字が予想されます。その他さまざまに、太田市とは違う要素も考慮しなければならないでしょう。しかしぜひ、一度検討するべきであると思いました。
 それにしても、と、結局冒頭の話に戻るわけですが、要は「やる気があるかどうか」に尽きると思います。議論を始めることを、ともかく私は促してまいりたいと思います。

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